通算40年以上、投資の世界に身を置く“tsumiki no Jii-sama”。
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tsumiki証券 取締役tsumiki no Jii-sama
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以前、このブログで「株式は成長資産である」と言いました。それは会社の長期的な成長に合わせて企業価値が上がり、株価も上昇していくからです。しかし「債券」ではこういうことは起こりません。成長する企業が発行した社債であっても、発行時にあらかじめ決められた利回りで利息が支払われ、満期に元本が償還されるだけです。おまけに、社債を発行する企業が優良であればある程、利回りは国債や銀行預金に近いものなってしまい、長期に投資する意味は乏しくなります。その上、万が一ではありますが、発行した企業が倒産してしまえば利息が支払われないどころか元本すら失う可能性もあります。言い換えれば、株式の持つ長期的な「アップサイド」(期待以上に価値が上がること)の可能性は全くないのに、確率は低いものの、「ダウンサイド」(期待外れの損失)の可能性があるということです。昨年アメリカのシリコンバレーなどであったように、安全だと思って利回りの低い預金にしていたら、預けた銀行が倒産してしまったというのによく似ています。
一般的に言われる「株式はハイリスク・ハイリターン」「債券はローリスク・ローリターン」というのは、「一定期間の値段のブレ」が大きいか小さいかを言っているにすぎず、期限を決めない「長期投資」を行う場合は、この考え方からきっぱりと卒業しなければなりません。実際、リスク計算のもとになっているデータは通常、過去5年から10年程度の期間における「月次リターン(プラスもマイナスもあり)」、つまり1か月間の値動きに関するデータを統計的に処理したものです。金融用語として使われるこの「リスク」という言葉は、私たちが常識としている「リスク」の意味、つまり単なる「損失」とは随分違うものだと思いませんか?ましてや投資の本来の目的は、「アップサイド」が大きいと思われるものを資産として長期保有したいはずなのに、1か月間の値段のブレが小さいものに投資して安心しようとするのはどこか滑稽です。また、株式と債券を一緒にファンドに組み入れると、株式と債券は逆の値動きをすることも多いことから、ファンド全体の「計算上のリスク」は大きく下がります。これが「分散効果」と言われるものですが、それをもって「安心」と考えていらっしゃる方は、債券が組み入れられる分だけ、長期での資産の成長性が大きく損なわれてしまっている事に気づく必要があるでしょう。
「株式」「債券」など、それぞれ全く異なる性質をもった資産を「値段のブレ=リスク」という極めて単純な統計学的数字を用いて比較をするのは、限定的な状況でしか意味はありません。お気づきの読者もいらっしゃるかと思いますが、それは、例えば1年とか2年とか、「ある一定の期間内で投資を完了させたい場合」です。あらかじめ期間が決まった運用で、目標とする運用リターンを「比較的高い確率」で達成するための一番単純な方法はこうです。まず投資期間内に満期が来る債券を多く持ちます。そして、その債券より高いリターンが見込めるものの、その高いリターンを「期間内に達成できる確率はそれ程高くない」株式などをある程度加えることでリターンの上乗せを狙うのです。その時、正に「値段のブレ=リスク」という考え方に基づく統計学的リスク計算が威力を発揮します。例えば1年の投資期間で3%のリターンを得たいのだけれど債券市場での1年債の利回りは2%しかない場合、足りない1%を株式で補うにはポートフォリオに何%ぐらいの株式を組み入れれば7割近い確率で3%の利回りが達成できるはず、というようなことが計算できてしまうのです。まあ、これも過去のデータに基づくものなので、将来の結果がそうなる保証はどこにもないわけですが・・・。
また、大きな証券会社では、顧客との取引の為に在庫として持っている様々な有価証券を、この様な手法によりコンピューターを駆使してリアルタイムでリスク値を計算し、在庫のリスク管理に役立てています。ただ、リーマンショックのような前代未聞のことが起こって過去の「値段のブレ=リスク」というデータが使い物にならなくなる時、このリスク管理手法は破綻してしまうのですが・・・。
このように、ある一定の期間内での運用や、証券会社の在庫管理などに利用されている「値段のブレ=リスク」という考え方ですが、期間を限定しないで長期的な資産形成を目指す読者の皆さんにとってはあまり役に立たないどころか、下手をすると投資の本質を見失いかねない、理屈倒れの考え方のように思えます。
「リスクを取らないとリターンは得られない」とはよく聞く言葉ですが、「値段のブレ=リスク」と単純に考えて、単に値段のブレの大きいものに投資しても、自動的にリターンが得られるものではないことは明らかです。長期投資の本質は「成長資産はどれなのか?」を見極め、それに長期にコミットすることです。そして「株式は成長資産」とは言え、株式なら何でもよいというものでもなく、その中でも優れた経営力と頑張る社員のチカラで長期に企業価値を増やしてゆける会社を選び抜いて投資する「アクティブファンド」が長期投資の王道、というのが筆者の長年の経験から得た結論です。そうは言っても、いつ頃これくらいの金額を用意しておきたいという生活上「期限の決まったお金」の運用については、正に「値段のブレ=リスク」ですから、長期の成長投資ではなく預金などで行うべきなのは当然です。これは「借金での投資は厳禁」と全く同じことで、借金には「期限があるから」です。
金融の専門家が特定の仕事上の目的のために作った理屈としての「リスクとリターン」の考え方、この機会に長期の成長投資との相性に想いをめぐらしてみて下さい。
tsumiki no Jii-sama
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