tsumiki証券 取締役会長 荒尾 耿介
資産づくりに長くかかわってみて
60年ちょっと生きていると、色々思うことがあります。これは良かったなーとか、これは失敗だったなーとか・・・。
良かったことの一つが、資産作りの方法です。比較的早く結婚して子供も2人ありましたし、ただのサラリーマンですから、商売で大当たりして大きな収入があったわけでもありません。
でも、毎月少しずつ、ボーナスが出た時は多めに、成長性のあるもの、たとえば株式や投資信託に投資をしてきました。銀行に預ける定期預金のようなものは、例えば子供の学費のために「いついつまでにいくら」という目的で貯めますので、その資金が必要になる時期が来ると使って、なくなってしまいます。
一方で、つみたて投資は、増やすことが目的ですから、目に見えて増えるまで売却はしませんし、増えてくれば増えてきたで、もっと増やしたいという欲が出てきて売却したくなくなります。
結果、5年、10年、20年と長期にわたって売らずに保有することになり、気づいてみると、一つの金融資産のカタマリになっていたという訳です。定期預金も20年続ければ、ある程度のカタマリにはなりますが、成長性のあるものに投資した場合に比べて、カタマリの大きさが随分ちがってきます。
お金がカタマリになるとココロの「お守り効果」は絶大
金融資産のカタマリは、その金額はいくらであれ、日々の生活にも、仕事上も、大きな心の余裕をもたらします。
私の場合は、会社を首になってもすぐには生活には困らないと思うことで、自分の考えに正直に、上司に対しても正論をぶつけ、楽しく仕事をすることができました。会社の方針が気に入らなくて、実際に会社をやめてしまったことすらありました。
よく、「酒は飲んでも、のまれるな。」といいますが、お金も同じだと思います。「お金は使っても、使いすぎて、お金に使われるようになってはダメ!」ということでしょう。
逆に、お金をある程度のカタマリとして、つまり資産として持つと、お金に支配されるのではなくて、お金を支配する、お金から自由になれるような感じです。こういう精神状態は、金融資産のカタマリが大きいか小さいかはあまり関係ないように思います。小さなカタマリでも、「お守り効果」は絶大です。
好きなものは長続きする
世の中には成長性のある投資対象はおびただしい数にのぼり、専門的にはリスクの種類や度合いの違いから、多くのカテゴリーに分類されていますが、その中で何を選んでつみたてていくのか?
私は40年近く投資と資産運用関連の仕事をしてきて、見えてきたことがあります。
それは、自分の好きなもの、好きと思えるものを選べばよいということです。好きであれば、長続きします。長続きしなければ、カタマリになりません。
投資は将来の成果が正確には予測できないものです。5年後、10年後、どの投資信託の成績が一番良いかは誰にもわかりませんから、どれに投資するか悩むよりは、とにかく長く続ける努力をすることです。「長続きが勝ち」です。
レストランを選ぶように、資産づくりと付き合ってみる
皆さんは、レストランを選んだり、レストランに入ってどのメニューにするかを選ぶとき、どうしますか?
ナンカ美味しそうなオーラの出ているレストランに入りませんか?そして、メニューを見て食べたいもの、好きなものを選ぶ。ネットでレストランの評価を見るのはある程度参考になりますが、大事なのは自分の感性ですよね。
食材はどこの何を使っているのかとか、食品成分分析はどうなっているとか、どんなレシピで作っているのかを気にしていては、メニューを決められなくなります。
レストランの店員さんがメニューについて説明してくれるときの内容や雰囲気で、気に入ったものを注文するのです。
料理人がわざわざテーブルまで出てきて、こだわりのウンチクを語ってくれれば、メニュー選びも更に楽しくなり、そのレストランが好きになって常連になってしまいそうな予感が・・・。
そして、何回か通ってみて、よければ継続。でも、「あっちの店」が気になって、行ってみることもありますよね。その結果、「あっちの店」の方が好きになることも・・・。それも、アリだと思います。
投資信託もご自分の五感と感性に素直に、好きになれるものを決めて継続すれば、また次に見えてくるものもあるかも知れません。